島根半島の日本海側に面した美保関町笠浦地区で毎年1月7日、正月に迎えた海神や船神を龍神船で送り、1年の海上安全と豊漁を祈って行われる行事。一説によると船競走の代わりとして明治時代中頃に始まったという。
藁を束ねて糸で巻き、竹釘だけでとめて作った長さ約1m60㎝の祭りのシンボル「龍神船(龍神さん)」は方言で「リンゴンさん」と呼ばれる。
〔 龍神さん 〕
藁を50本ずつ束ねて糸で巻き、それを竹釘だけでとめて作られる。 この製作方法は代々受け継がれており、重要民俗資料として昭和52年に国立歴史民俗博物館に収納されるなど貴重な地域文化遺産として伝承されている。
船には海神や船神の神名をかいたのぼりを立て、白米、神酒、それに山のようなみかんとすりこ木のような棒(手名槌、足名槌)が供えられる。
頭屋によって担がれた龍神さんは、大勢の見物人の見守る中、太鼓、笛の囃しに合わせて通りを練り歩く。 「大漁して、またのぼりを立てて、関の明神参詣する」と神謡(地元に伝わる祝い歌『若松』)を謡いながら神幸行列をして浜まで出る。 そして、龍神さんは地区の人々に見送られて定置網船に乗り海上へ。 湾内を幾度も回った後、龍神の許まで行くようにと祝詞を奏上して、小舟に移し、港内中央付近で海上に流される。 波にのって湾外に流される龍神さんを見送りながら、笠浦の人々は今年の豊漁を確信し、海上安全と豊漁祈願の神事が終わる。
1月5日、6日:頭屋、当番、龍神船の造船技術を伝える技師など約20人が漁業センターに集まり、藁で龍神船を製作する。また、松の木から男根の形をした手名槌、足名槌の表像を作る。2日間かけて完成した龍神船には酒やみかんが奉納される。
1月7日:正午過ぎ~ 漁業センターに関係者一同が集合し、神職を迎えて龍神船に対する一連の神事を行う。その後、直会。この直会の中で龍神船巡行の諸役が神職によるくじで決定される。
14:00頃~ 地区内を頭屋が龍神さんをかついで練り歩く。 神幸行列は猿田彦を先頭に、龍神さんを乗せた御輿、手名椎、足名椎という順番である。その後ろから地区内の婦人がお供えなどを持って続く。(近年では車に乗せることもある) このとき、各所で手名椎、足名椎役の者は男形を構えて「しゃくとり」と呼ばれる子孫繁栄を願うコミカルな踊りを行う。地区内一周後、漁協前に戻り、龍神船を流す。
16:00頃~ 頭屋がお供えのみかんを投げ、それを地区の人たちが拾う。
松江方面から⇒笠浦
【松江駅】⇒(一畑バス:美保関ターミナル行/約45分)⇒【美保関バスターミナル】⇒(美保関コミュニティバス:笠浦線/19分)⇒【笠浦】
米子方面から⇒笠浦
【米子駅】⇒(路線バスまたはJR/約45分)⇒【境港駅】⇒(美保関コミュニティバス:境港線/11分)⇒【宇井渡船場】⇒(美保関コミュニティバス:美保関線/14分)⇒【美保関バスターミナル】⇒(美保関コミュニティバス:笠浦線/19分)⇒【笠浦】